春なのに冬のような日が続いていますが、みなさま、体調など崩していませんか?
私の住む茨城の石岡では桜も散ってしまいました。でも、これから夏に向かっていくなんて、思えない毎日ですね。ハムレットは「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」とか言ってますが、私はとりあえず、灯油を買い足すべきか、エアコンで乗り切るべきか...、そこが問題だと頭をかかえている毎日でございます。
さてさて、今まで4回、お届けしてきた酒井先生のインタビューも、今回で最終回です。スクラップブッキングをしている友達に「ファシリテータに興味が出てきたよ」って言われたり、「読んでいて暖かい気持ちになったよ」なんて言われて、嬉しい私です。最終回の今回は、先生の個人的なことや、夢などもお聞きしました。じっくりとお楽しみください!
<個人的なスクラップブッキング>
おれい:酒井先生の個人的なことを、お聞きしてもいいでしょうか?
酒井:いいですよ。
おれい:先生は個人的に写真を撮って、ご自分でスクラップブッキングはなさってますか?
酒井:楽しんでやってます。作るときは癒しの時間ですねー(笑)。なかなか時間が取れないんですけど、例えば、旅行のときの思い出を1枚のアルバムにしたりとか、娘が昨年大学を卒業したんですけど、卒業式のときの写真でスクラップブッキングしたりして楽しんでいます。それから、大切にしていた文鳥が不慮の事故で死んでしまい、とても辛い時期があったんですけど、それを自分自身の癒し、グリーフ(悲嘆)ケアとして、たくさんの写真をひっぱり出してアルバムに飾ってあげたりしましたね。写真を撮る、スクラップブッキングするっていう時間が、自分自身の一番の癒しの時間ですね。
おれい:そうですね。私も一番の癒しの時間がスクラップブッキングですね。
酒井:皆さんもそうでしょう? 純粋に自分のためのスクラップブッキングやってね、癒されるってすごいと思いますよね。
おれい:気持ちいいですよね。出来上がったときの満足感とか。
ちか:忙しくてスクラップブッキングができない時期があって、久しぶりにトリマーに触るとやっぱりこれは楽しいって、感動してしまいますね。休んでいる期間が長ければ長いほど、その感覚が強い。
酒井:禁断症状(笑)に似ていますね。
ちか:そうですね。やっぱりこれは私のためにあるものだ! みたいな、そういう感覚があるんですよ。
酒井:出来た作品を見て、いつまで見ていても見飽きないしね(笑)。今日の作品を作ってくれたお年寄りの皆さんも、部屋に飾るよ、なんて言ってましたよね。
おれい:ジャーナル書きながら泣いていらっしゃる方もいましたね。もらい泣きしそうでした。
酒井:それができるってすごいですよね。自分の感情を素直に表に出すことって、なかなか、できないですよ。
おれい:私もそうですね。娘が小学校1年生なんですけど、その娘に対しての気持ちが素直に書けるのが、スクラップブッキングしながらジャーナルを書くときなんです。それ以外はなかなか気持ちを文字にする機会がないですね。
酒井:私ももっと早くにスクラップブッキングと出会っていたら、子供への贈り物がいっぱいできたのに。
おれい:今はそれが我が家の宝物だと思っています。未来の娘へ手紙を書いているような気持ちで書いていますよ。
酒井:お子さんたちにも、ほんとにいい宝物ですよね。
おれい:でも、お嫁に行くときに、そのアルバムを渡せるかっていうと「いや、ちょっと持って行かないで、家に見に来て」って言うかもしれないけど(笑)。
酒井:わかります。だって、自分の大切な思い出なんですものね。
<キャリアウーマン>
おれい:先ほど先生は、以前はキャリアウーマンだったっておっしゃっていらしたんですが、どんな業種で働いてらしたんですか?
酒井:最後に努めていたのは外資系の銀行、米系の投資銀行の人事部で働いていました。
藤田:今とまったく違う業界だったんですね。
酒井:そうです。そこでは社員が効率性や売り上げのために身を粉にして働いていましたが、本当にハードな世界でしたね。トレーダー、ディーラー、株、為替...、最後に行きついた勤務先はまさにマネーゲームの現場だったんですけど、そこに入ってすぐに肺癌と疑われるものが二つも見つかってしまいました。それからしばらくの間は人生のどん底とも思える辛い時期でした。そうこうしているうちに写真と出会い、悩んだ末に会社を辞めて、2004年に写真を通した社会貢献を目的としたNPO法人クローバーリーフを立ち上げました。今振り返れば、それまではもうバリバリのキャリアウーマンでしたね。人事企画、人事・労務管理という仕事に携わってきまして、わかりやすく言うと、福利厚生制度を作るとか、給与制度をどうするとか、人事考課制度をどうするとか、あとは合併のときの社員の待遇をどう調整するか、とかそんな仕事をしていました。前任者が残していった労働紛争を受け継いで、労働組合さんとも裁判で大分やり合いましたよ(笑)。
おれい:それは、ストレスが多そうですね。
酒井:まあ、やりがいもあって、お給料も高かったし、キャリアとしては申し分ない仕事だったとは思うんですけど、信じられないくらい忙しかったし、ほとほと神経をすり減らしました。そこで神様がね、「お前、何をしとるんだ!こんなところで働いていていいのか。お前のやるべきことは他にあるだろう」っておっしゃったのかもしれませんね。
おれい:酒井先生にこの世界に来てもらってよかったです。先生にはこちらの世界にいて欲しい(笑)。そう肩をたたいてくれた神様に感謝しないといけないですね。
酒井:ありがとうございます(笑)。いつも、写真の神様っているような気がしているんですよ。ほんと、写真で元気にしてもらったから。今振り返れば、人にご迷惑をかけてしまって申し訳なかったなと反省することや、大変なこともいっぱいありますけど、今、この仕事ができることはとても幸せです。
おれい:素晴らしいですね。やっぱり神様は間違ってなかった。
酒井:自分が生かされていて、こういうところで皆さんと出会って、今日のように参加者の皆さんの笑顔が見れるっていうのが、すごくうれしいんです。人が元気になるところや、喜んでいるところを見るのが、私の元気の素ですね。
ちか:写真といえば雑誌の記事に載ってる酒井先生の写真、あるじゃないですか。あれね、いつも好きでいいなあと思ってるんですけど、あれは誰が撮ったんですか?
酒井:あれは当時2歳か3歳の男の子が撮ってくれたんです。
一同:ほーー。
酒井:フォトハイクのときに「撮ってあげるよ」って言って、撮ってくれたんです。結構前なんですけど、いつだっけ...2004年だから、すいません、5年も前の写真です。
ちか:全然、変わらないですね。撮ってる人の楽しそうな感じとか、撮られてる先生の楽しそうな感じがすごく見えて、いい写真だなって思っていました。
おれい:伝わってくるものがありますね。
酒井:そうですか? 子供目線だから、余計そう思えるのかもしれないですね。
<カメラのこと>
おれい:こういう写真を1枚撮れると、幸せになりますね。
酒井:ほんとそうですよね。写真って、奥が深いんですよね。敷居が低いんだけど、やっていくと、すごく奥が深い。多分スクラップブッキングもそうだと思うんだけど、それが面白いところかな。デジカメを使えば、シャッターを押すだけでくっきりはっきりした写真が写るから、今日みたいに簡単に、初めてでも結構いい写真が撮れる。でもほんとに自分の気に入った作品作りを目指していくと、何年やってもきりがないぐらい写真って奥が深い。カメラの操作や、光を読んだり、いろいろなテクニックがあるんですけど、それはとても奥が深いんですよね。
おれい:突きつめたら大変な道のりが待ってるんでしょうね。
酒井:うん、面白いですよ。皆さん、最近はコンパクト・デジカメから入るけど、一眼レフが楽しいと思います。もっといい写真にしたいと思ったら、一眼レフを使ったほうが、自分の思ったような表現ができます。
おれい:どんなカメラを使って撮ってるんですか?
酒井:一眼レフです。ニコンのF100っていう。フィルムの一眼レフ。ポジ、リバーサルフイルムを使っています。やっぱりまだまだデジタルとは違う表現ができると、私は思ってます。難しいんですけどね。
藤田:今はまだ、デジタル一眼は手を出さないんですか?
酒井:いや、デジタル一眼もやってますよ。仕事のときはいつもデジ一(デジタル一眼レフカメラ)ですね。やっぱり便利なんですよね。だって現像に出さなくても、家でもすぐに加工できるし。
藤田:でもご自分の趣味でやるときはフィルムなんですね。
酒井:そう、やっぱり自分の作品作りとしての写真はフィルムなんですよ。また違った楽しみがありますよね。現像から上がってくるまで、何が撮れているのか分からないというわくわく感もあるし。まさに「開けてびっくり玉手箱」です。
藤田:やっぱり1枚、1枚に気合いが入るでしょうね。
酒井:入ります、入ります。だってフィルム1本が800円とか900円して、現像するのも同じくらいかかるんですよ。だからやっぱりシャッターを押すごとに渾身の1枚になるんですけど、またそれはそれで楽しい。それから、最近の脳科学でもわかってきたんですが、写真を撮るのは脳のトレーニングになるというか、特に歩きながら撮るっていうのがすごくいいんですよ。運動療法と写真療法を兼ねたようなもので、ものすごく脳の活性化になって。自分自身の経験から、体や脳を活性化すると、うつ的な気分も改善されるようです。だから、私「あ、いけないな、心や体が疲れてるな」と思うと、カメラを持ってハイキングに出るんです。遠くに行けないときは、デジカメを持って家の周りを2、3時間、長い時には半日ぐらいかけて歩くんですよ。お散歩写真ですが、そうすると頭がすごくすっきりします。気持が落ち込んだり、ぱっとしないときに、写真を夢中になって楽しんだあとには、不思議と気分がよくなります。それものんびりぶらぶら歩く程度じゃなくて、少しだけ、わっせ、わっせ、と歩きながら、体に少し負荷をかけるくらいがちょうどいいみたいですね。
おれい:家でのんびりして、休めようと思っても、なかなか疲れがとれないようなことが、最近あって、年かなと思ったんですけど、そういうことかもしれないですね。面白いですね。フォトハイク。はやるかもしれない、石岡周辺で(笑)。
酒井:ぜひ今度やってみてください。
<酒井先生の夢>
藤田:最後に、先ほどの話をダブる部分がありますが、この活動を通して夢、目標はどんなものを描いていますか?
酒井:協会の活動としては、専門職としての写真療法士の育成。音楽療法士さんが様々な医療福祉現場で専門職として活動されていますが、それの写真バージョンですね。有償で、お仕事として写真療法を実践していく人材の育成です。でも個人的な究極の夢は、戦争とか争いのない平和な世界、全ての人の生命(いのち)が尊重されて個性を輝かせて生きてゆける世界になってほしいってことです。そのために私にできることっていうのは、こういう写真を使ったこの活動くらいなんですけれど。私が提唱している写真療法のワークショップの原則っていうのは、どんな表現でもその人の個性・感性として認めていくということ。それぞれの人には、違った意見、考え方、生き方、人種、宗教とかいろんなものがあるかもしれないけれども、そういう様々な多様性を認めて尊重していくことって、平和な世界を実現する中で大切なことだと思うんですよ。
おれい:その多様性が認められないから、今でも戦争が起きているんですもんね。
酒井:そう、何か違いがあっても、それをネガティブな方向で、減点方式で「ここが駄目、あそこが駄目」と言ってても決して解決にはつながらないと思う。それを相手の立場にたって違った見方ができる、尊重するということで、その人と理解しあえる。国と国の紛争、個人と個人、家族の中かもしれないけれども、どんな相手でも、理解しあう努力というのはとっても大切だと思うんです。
おれい:批判する前に、相手の立場を理解する気持ち、ですね。確かに、簡単なようでとても難しいですね。
酒井:だからやっぱり、これは自分自身への戒めでもありますが、コミュニケーションを大切にしなくちゃいけないですね。たとえば、スクラップブッキングしているときに、ジャーナルを書くけれども、最後に一言、気持ちを添えて完成しましょうって言っても、なかなか言葉にできない人がいますよね。それはいつもの生活の中でも同じで、「こんなことを言ってもどうせ伝わらないだろうから」、とか、「言ったら笑われるんじゃないか」、「相手を傷つけちゃうんじゃないか」、「けんかになっちゃうかもしれない」など、恐くて気持ちを伝えられないことがあります。反対に、相手への配慮が足りずに、またはそのつもりでないのに、何気なく言った一言で相手が傷ついてしまうことがある。だから、あくまでも相手を配慮した言葉で、きちんと自分の気持ちを伝えなくてはいけないですよね。とても難しいですが、それは平和な世界を作っていくうえでとても大切なことだと思います。
おれい:基本的なことですが、難しいことですね。でも日本人は特に、「気持ちを伝える」ことが苦手なような気がします。
酒井:そう、特に日本人は自分の気持ちをしっかりと伝える、自分で何かを考えて、自分がやりたいことをやっていくとかって、苦手な人がいっぱいいますよね。非常に関係性を重視して、和を大切にする。それはそれでいいんだけど、たとえば戦争とか、国全体が変な方向に動いて、悪いほうに流れかけているときには、一人一人が、自分が正しいと思うことをきちんと言葉にして発信していくべきですよね。そういうことは、とても大切なことで、日本人はそれがすごく苦手なんじゃないかなと思うんですよね。
おれい:そうですね、これからは苦手、って逃げている場合じゃないかもしれませんね。
酒井:生命(いのち)の大切さ、尊厳というのが、私の活動の原点にあるんですが、それを守ってゆくには、平和な世界というのがすごく大切だと思います。だから世界が平和なこと、それぞれの生命(いのち)や個性が大切にされる世界...、競争とか紛争ではなく、共存とか共栄で成り立つ世界になってほしいと思います。平和な世界の中で、うんと輝いて、みんな元気になってもらいたいなって思います。
おれい:素晴らしいですね。本当にいいお話を伺いました。インタビューじゃなくて、講演を聞かせていただいたみたいです。酒井先生、本当にありがとうございました。
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5回にわたってお送りしてきた酒井先生のインタビューも今回で最終回です...。インタビューが終わったあとは、なんだか素敵なドラマを一本見終わった時のような気持ちになりました。お話を聞いて、励まされたり、こんなに暖かい気持ちになったのは初めてでした。酒井先生、貴重な時間、貴重なお話を本当にどうもありがとうございました。
さて。次回ですが、すでにインタビューは終わっております。次はどなたなんでしょうか?? 「あの人」からあんなお話や、こんなお話を聞いてきましたので、どうぞお楽しみに!