先日、都内で酒井先生にちょこっとだけお会いする機会がありました。インタビューのときは、ずっと座って話していたので、気付かなかったのですが、酒井先生、身長がとても高くていらっしゃったんですね。
(いや、もしかしたら、この4カ月で成長されたのかもしれないけど)
酒井先生、 もう少しゆっくりお話したかったんですが、すみません、バタバタしておりまして...。また今度、ぜひ、ゆっくりお話させてください!!!
さて今回は、ちかちゃんが泣きます。彼女はよく泣きますが、今回もインタビュー中にポロポロと泣いておりました。目の端にそんな彼女の姿が入り、インタビューに集中できない私でした。みなさまも、ハンカチを用意の上、お楽しみくださいませー。
おれい:対象にしている方はどんな方がいらっしゃるんですか?
酒井:対象者はもう子どもからお年寄りまで、誰でもです。
おれい:例えば、さきほど少し伺った、脳に病気をお持ちの方とか、リハビリが必要な方、それから精神的に少し弱くなっている方とか、そんな方もいらっしゃるんですよね。先生が印象に残っていらっしゃる生徒さんがいらしたら、教えてください。
酒井:そうですね。こども病院の院内学級で、とても印象に残っているお子さんが、ひとりいましたね。これは後で聞いて知ったのですが、病院に入ったときには、精神的にもかなり不安定な状態で、院内学級にも来れないくらいのお子さんでした。でも「デジカメのワークショップに参加してみない?」って、先生が誘ったところ、なぜか参加してくれたんですね。そして1回目にトンボの写真を撮った。でもその最初の写真は、後ろにピントが合っちゃって、ピンボケだったんですよ。そして2回目にマクロ(接写)の機能を教えたんです。そしたらそのお子さんはもう1回、トンボの写真に挑戦して、それがものすごく見事に撮れたんです。大手雑誌の広告にも採用されたぐらい立派なトンボの写真が撮れたんですよ。
おれい:ちょっと教えただけで撮れちゃったんですね。すごい。
酒井:そこで、私たちのワークショップで、彼女の写真をうんとほめたんです。「すごいね、すごいね、ほんとうにこれは素晴らしい」。おせじじゃなくて、本当にいい写真だったんですけどね。そうしたら自信がついたようで、だんだんお友達と一緒に写真を撮りはじめた。そして、ワークショップ3回目で、そのお子さんの写真に物じゃなくて「人」が入り始めたんです。
おれい:ああ、素晴らしい。鳥肌が立ちました、いま。
酒井:院内学級の先生が「写真に写っているこの子の笑顔は、今まであまり見たことがない」とおっしゃっているほど、写真を楽しんでいました。写真を撮りながらお友達とコミュニケーションをとっていくことで、自分の気に入った写真を撮れるようになって、元気に退院していったっていうお子さんがいました。
ちか:このお話は前に先生からお聞きしたことがあるんですけど...、何度聞いても、もう...(泣)。
おれい:ちかちゃん、私ももらい泣きしちゃうからやめて(笑)。先生のワークショップにはもっともっとたくさん素敵なエピソードがつまっていそうですよね。他にも印象的なお子さんは?
<神秘的な写真>
酒井:エピソードならたくさんありますよ(笑)。病気の後遺症のために体が小刻みに震えている状態でワークショップに参加してくれたお子さんなんですが、やはり院内学級に出席してなかった。で、そのお子さんに、たまたま廊下ですれちがったので、「ちょっと写真で遊んでいかない? 押すだけで簡単に撮れるから」と誘ってみたんです。そうしたら参加してくれて、震える手で、頑張って、頑張って、一枚の写真を撮るのにも何分もかけて撮ったんです。そうしたら、中庭の木を撮ったんですが、手ぶれによる半円形の不思議なボケがたくさん写っている写真が撮れたんです。
おれい:がんばってカメラを構えてくれたんですね。
酒井:で、これがもし普通の写真教室だったら「ああ、ぶれちゃったね、今度は頑張ってしっかり撮ろうね」ってなるんですけど、私たちはその人の表現を、個性、感性として、すべて肯定して、それをプラスの言葉で表現してあげるっていうのが方針なので、みんなで誉めたんですよ。「とっても、とっても、神秘的で素敵な写真だね。こういう写真は普通は絶対撮れないよ」って。もちろん、みんなも本当にそう思って、そう言ったんですよ。そうしたらそれがお子さんの自信になった。
おれい:確かに、それは大きな自信になるでしょうね。自分でがんばって撮った写真を認めてもらえたら、それは絶対嬉しいはずですね。
酒井:本当は手の「ぶれ」を止めたかったと思うんですね。でもそのお子さんは撮った写真をとおして、今の自分自身の病気や障害の状態をも他の人に受け入れてもらえた、こんな私でも褒めてもらえるんだ、っていう自信や安心感を得たんだと思います。で、すぐにそのお子さんは自分のカメラを買ってもらって、病棟でもどんどん撮りはじめたんです。そしたら、すごいんですよ。間もなく、ぶれないしっかりした写真を撮りはじめたんです。これはお医者さまが本当に驚いていらっしゃいました。まさに一種のリハビリ効果ですね。
おれい:いい写真を撮りたいという気持ちが手のぶれを止めたんでしょうね。
酒井:そうなんです。で、そのお子さんは写真を撮ったあとのスクラップブッキングの時間でもいつも最後まで残って自分の作品作りに没頭されていました。なかなか帰ろうとしないんです。退院してからもわざわざ私たちのワークショップのある日に通院日を併せて来てくれて、とても印象に残っていますね。
<これからの写真療法>
おれい:素敵なエピソードですね。本当に素敵。先生は、これからの写真療法をさらにどのように発展させていきたい、と考えていらっしゃるんですか? 最初は写真を撮ることから始まって、スクラップブッキングがプログラムに足されたりしましたよね。さらにこれからまた何か?
酒井:写真っていろんな楽しみ方があると思うんですよ。撮ることもそうだし、撮られることもそうだし、撮った写真を見ることもそうだし。あと、それを加工して楽しむっていうこともあると思うんですけど。
おれい:写真自体を加工するということですね。
酒井:そう、だけどスクラップブッキングって、そのすべての要素が入っているから、これからもスクラップブッキングは、写真療法の一手法として提唱していきたいと思っていますね。あとは今、力を入れているのが、ワークショップを実施できるファシリテーターの養成です。
おれい:そうですね、もっとたくさんのファシリテーターの方が増えてくれたら、写真で元気になる人がもっともっと増えるっていうことですもんね。
酒井:それから、もう一つ。いろいろな先生方のご協力を得て、写真療法の学術的なところをまとめて書籍化するということを考えています。その本ができると、ファシリテーターの次のステップとして、もうちょっと学術的なところも勉強してもらえるのかなと思っています。セラピーとしての音楽を実践する音楽療法士といった方がたが、今、いろいろなところで活躍していますけれども、ファシリテーターも今後、専門職として、活躍してもらいたいですからね。
おれい:今は、ファシリテーターの方はそういった学術的な要素の勉強はなさっていないんですか?
酒井:ファシリテーター養成講座ではそういう学術的なバックグラウンドはあまり入れていないんです。今は、どちらかというと実践分野が中心です。ですから、色々な専門家のご協力を頂きながら、今後、写真療法士養成のための専門講座を開いていきたいと思っています。
おれい:学術的なバックグラウンドは、実際に使わないかもしれないですけど、自分の中に吸収されているかいないかで、ずいぶん違ってきますよね。
酒井:そうなんですね、その方の自己研鑚とか、自己成長のためにその講座を受けていただくだけでもいいんですけども、専門講座で、私が提唱している写真療法の基礎になっている心理学や、カウンセリングや芸術療法、そういった分野も含めて勉強していただいて、その上で知識を実践に活かしていただけたらと思っています。なので、今考えている書籍がきっかけとなって、写真療法を専門職として学びたいと思ってくれる人を増やしていく、というのが次のステップになってくるかなと思ってます。
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今回はここまでです。
次回はついに最終回です。泣いたり笑ったり、とにかくシミジミ、ナルホド、と楽しませていただいたインタビューも残すところあと一回。最後は酒井先生に個人的な質問などをしてみましたよ!
どうぞお楽しみに!!!