「酒井貴子さん 第1回 ~創作的なことは心も体も元気になる~」

前回のインタビューがアップされてから、夏が過ぎ、秋も過ぎ去ってしまいました。みなさん、お元気でしたでしょうか?  うかうかしているうちに、12月も半ば...。2009年が早送りで終わってしまうようで、気ぜわしい毎日を過ごしております。 

さてさて。第4回目の「素敵なあの人」は日本写真療法家協会の酒井貴子(さかいよしこ)先生にお話しを伺ってまいりました。 ラブマイメモリーズや、CKwithSSの誌上などでご存知の方もたくさんいらっしゃると思いますが、改めて先生のプロフィールを紹介させていただきます。

 

 

<先生のプロフィール>sakaisensei.jpg

酒井貴子(さかいよしこ)
NPO法人日本写真療法家協会代表理事、PO法人クローバーリーフ理事、フォトセラピスト。人を癒したり元気にするセラピーとしての写真の利用と新たな写真文化の創造を目指して活動中。スクラップブッキングを通して自由に自分の心の世界を表現し、自信や集中力、創造性を育む「セラピー・スクラップブッキング」を提唱。

 

 

 

 

 

今回、先生のお話から伺ったお話は、写真、そしてスクラップブッキングの奥深さに気付かせてもらえるお話ばかりでした。人を癒すことって、案外、身近にあるものなんですね。

忙しい季節ではありますが、ここらでちょっと一息。温かい飲み物でも用意して、パソコンの前に座ってください。それではどうぞごゆっくりお楽しみくださいませ!

 

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<写真との出会い>

おれい:それでは、酒井先生、今日はよろしくお願いします。

酒井:よろしくお願いします。

おれい:先生は「写真療法家」として活躍されていらっしゃいますが、写真で人を元気にしようと思ったきっかけについて、最初にお聞きしたいと思います。先生はもとから写真がご趣味でいらっしゃったんですか?

酒井:そうですね、写真は元々個人的に楽しんではいました。でも本格的に始めようと思ったのは、肺がんの前がん症状であるものが二つも見つかったことがきっかけなんです。2000年の健康診断で肺がんの疑いが指摘され、すぐにがんセンターに通うことになってしまって...。タバコを吸うわけでもないのに、肺がんかもしれないなんて言われたんです。

 

おれい:それはショックですね。

酒井:かなりつらい時期でしたね。当初、まずは1か月の経過を見て、がんが大きくなるなら手術ですよ、とお医者さんに言われて...。そのころはバリバリのキャリアウーマンで仕事をしていたし、なんでこんなことになったんだろう、と落ち込みました。その1か月の経過を見る期間は、本当に生きた心地がしませんでした。

おれい:結果はどうだったんですか。

酒井:大きくなってはいかなかったんですが、最初は1ヶ月ごと、それから3ヶ月ごと、6か月ごと、という感じで何年もの経過観察が続きました。今でも2年に一度、がんセンターに通っていますが、一時は命の終わりを見つめる苦しい日々が続き、どんどん暗闇に落ち込んでいくような気がしていました。でも、そのおかげで「自分は何をして生きてきたか」とか「残された時間何をするか」と考えることができて、今では肺の中にある8ミリほどの二つのものが、「体に気をつけなさい」というお守りのようなものになっています。

おれい:その頃に写真やカメラと出会われたんですね。

酒井:そうですね、まだ苦しかったころ、たまたま、タンスの引き出しで眠っていた主人の一眼レフカメラを片手に軽井沢へ一人旅をしたんですが、青い秋空に真っ赤な紅葉、そして白い幹肌の白樺がトリコロールカラーで美しく、夢中になってシャッターを押しました。そして家に帰ってからその写真を見たときに、その時の感動がよみがえってきて、それがとっても嬉しくて。そしてそれ以降、自分の好きな写真を撮っては、絵葉書やカレンダーにして友人にあげて楽しみました。

おれい:経過観察の途中だったんですよね。RIMG0022.JPG

酒井:そうです。それまで苦しさに焦点をあてて暗闇に向かっていた自分の気持ちが、写真を撮る楽しさや自分の気に入った写真を撮りたいという意欲から、徐々に光に向かってまるで植物の芽が伸びてゆくような...そんな気持ちになって、知らぬ間に元気になっていました(笑)。で、もっとカメラのことを勉強したくなって、通信教育や風景写真のプロについて足かけ4年、みっちりと写真の勉強をしました。

おれい:写真に元気づけられたんですね。

酒井:はい。いつの間にか元気になった。心も体も元気になっていた。楽しいこと、創作的なことは心も体も元気になるんだな、ということを身をもって体験したんです。

おれい:素晴らしい出会いだったんですね。そして2004年にクローバーリーフを立ち上げたんですか。

酒井:そう、もしかして、自分が写真でこんなに元気になったということは、人にも写真で元気になってもらうことができるんじゃないのかなって、思ったのが最初でしたね。でも、そのときは、まだフォトセラピーとか写真療法といったものがはっきりと具体的な形になっていなかったんです。知識が元にあって何かを始めたっていうよりも、自分の体験と自分の思い、それをいろんな人に伝えたいな、っていうのが最初でした。

おれい:伝えたい、というお気持ちからだったんですね。

 


スクラップブッキングとの出会い>

おれい:写真でみんなを元気にしようというお気持ちでクローバーリーフを立ち上げられたわけですけども、スクラップブッキングも最初から採用されていたんですか?

酒井:はい、2004年の活動開始当初からスクラップブッキングも取り入れていました。

おれい:スクラップブッキングとの出会い、はどのようなものだったんでしょうか?
 
酒井:クローバーリーフの最初のワークショップは長野県立こども病院の院内学級で行ったんですが、そのプログラムを始める直前にスクラップブッキングと出会ったんです。プログラムは6回連続で、月1回の6カ月連続のコースを企画していました。そんなときに呉竹さんが家の近くでデモをしてらしたんですね。

おれい:記念すべき最初のワークショップの直前に、スクラップブッキングに出会ったんですね。すごく運命的ですね。

酒井:そうなんです。いつも私が行っているスーパー、というかちょっとしたデパートなんですけど、そこでデモをなさっていて、初めて見て「え、こんな楽しい写真を使ったクラフトあるの?」みたいな形で、びっくりしましたね。デモをしていらした方とも少しお話しをして「実は長野の県立こども病院でこういうワークショップをやる予定なんですけど、これを取り入れたら絶対楽しんでもらえそうな気がします」って言ったら、その方が「じゃ、そのときには呼んでくださいね。お手伝いします」と言ってくださったのが、最初の出会いだった。それが2004年の夏ぐらいですね。実際にこども病院でスタートしたのが2004年9月ですから。

おれい:酒井先生が、「暗やみ」を見てから4年後にはスタートしたんですね。

酒井:そうなんです。ワークショップの最初の4回は、写真を撮るっていうことが中心で、それをただ大きく引き伸ばしたり、パソコンを通してカレンダーを作ったり、年賀状を作ったり、どちらかというとバーチャルなクラフトでした。

 


<技術ではなく、とにかく楽しんでもらう>

おれい:ワークショップの最初は、写真を撮ることがメインだったんですね。写真を撮るといっても、生徒さんたちは戸惑いませんでしたか? カメラの技術的な指導も行ったんですか?

酒井:いいえ、写真撮影に関する技術的な指導はほとんどしませんでした。一番大切にしていたのは、写真の撮り方や、撮る物は「こうでなきゃいけない」という撮影指導は決してしないっていうこと。とにかく自由に撮ってもらおうっていうことを主軸にしていました。これは自分の経験なんですが、私が写真家の先生に指導してもらったときは、写真技術中心の厳しい減点方式だったんです。35ミリの小さいフイルムの中で、「あと1ミリ上を切る」「電線がちょこっと見えてるから駄目」「露出はあと3分の1アンダーに」なーんてやっているうちに、写真はうまくなりましたが、なんだかあんなに楽しかった写真なのに、いつの間にか苦しくなっている自分がいたんです。あるとき娘から「お母さんの写真って、だんだん暗くなってきた」って言われたんですよ。

おれい:写真を撮る技術にとらわれてくるというか...、そういうことですか。

酒井:そうそう。そこで学んだ技術は、自分が思ったとおりの作品作りをするためには必要だったと思うんだけれども、一般の人が写真を楽しんでもらうためには、技術よりも自由に撮ること、とにかく楽しんでもらう、それが一番だと思ったんです。最近のデジカメはすごくよく撮れるしね。

おれい:ほんとにそうですね。

酒井:なので敢えて「技術指導はしない」ということをプログラムの軸にすえよう、と思って始めましたね。

おれい:基本的にはデジカメの「オートモード」で撮ってもらって、写真を撮ること自体を楽しんでもらえればいい、という感じですよね?

酒井:そう。ときどきちょっとしたテーマを加えたこともあるんだけど、それは使っても使わなくてもいい。例えばマクロの使い方「こういうのもできるよ」とか。あとは「今日のテーマは夏。夏を表現してみよう」とか「クリスマスカードを作ろう」とか、ちょっとしたテーマは入れるんだけど、そのテーマにはまらない人は、何でも自由に撮っていいっていうルールで、プログラムを始めたんです。

 

 

<そして子供たちがはまった>

おれい:そして、自由に写真を撮ってもらって、スクラップブッキングの出番になるわけですね?

酒井:ええ、スクラップブッキングは6回のうちの最後の2回だったかな、3回だったかな、プログラムに取り入れたんですけど、子供たちのはまり方が、他のプログラムの時ともう雲泥の差でしたね(笑)。

おれい:はいはい、分かります、分かります。

酒井:勉強で15分もたないっていうぐらい体調が悪いお子さんや、「多動」の症状をお持ちのお子さんが、私たちのワークショップに来ると2時間経っても帰らないんですよ。それまでのワークショップ4回は、ある程度、決まった時間にお開きになって、そして「楽しかったよ」って言ってはくれていたんだけど、スクラップブッキングを取り入れてからは、なかなかお開きにならない(笑)。2時間過ぎても帰らない。先生方とか、お母さま方が「ほらほら、○○ちゃん、お風呂だから」「治療だから」「リハビリだから」って言っても、「もっと、もっとやりたい」って言ってくれて。もう、いつまでたっても熱中して、みんな楽しんでくれたんですよ。

おれい:うわー、嬉しいですねー。

酒井:なぜみんながそんなに夢中になってくれるのかっていうのは、当初、全然分からなかったんだけれども、スクラップブッキングというクラフトをワークショップに入れたことによって、とにかく子供たちが本当にはまって、楽しんでくれたことから、翌年度から、必ずスクラップブッキングをプログラムに入れるようになりましたね。

おれい:お子さんが夢中になってくれたから、スクラップブッキングが採用されたんですね。

酒井:そう。本当にそのはまり方が極端で、先生方も驚くぐらい。で、あるときに先生方から「酒井さん、子供たちをこんなに熱中させるスクラップブッキングって一体何なんでしょうね?」と聞かれたことが、私の次の活動のステップになりました。それまではセラピーとか療法とか、そういう言葉はおこがましいというか、まだはっきりとしたセラピーとしての写真の効果が知られていなかったので使いたくなかったんです。とにかく楽しんでもらって、プラスアルファ元気になってもらえればいいかな、という気持ちでね。でもたったその6回、6カ月やった中で、もう劇的に「行動変容」...っていうと難しい言葉になっちゃうんですけども、そのお子さんががらっと元気になっていくケースにいくつも出会ったんです。で、先生方からもそういう写真やスクラップブッキングには、医療的、療育的な効果があるって言われて、次のステップを考えはじめましたね。

おれい:次のステップというと、もう少し医療的な側面を広げたいとか、そういうかんじだったんですか?

酒井:そうですね、ただ楽しもう、というだけじゃなくて、セラピーとしての写真やスクラップブッキングの力っていうものを、学術的にもきちんと作りたい、そして、それをいろいろなところに伝えていく活動をしたいな、と思いましたね。私ひとりでしかできないことを、いろんな方と一緒にやれば、もっともっと広がるじゃないですか。

おれい:そうですよね、確かにもっと広がると思います。

酒井:クローバーリーフの1回目の効果が劇的だったので、そういう協会機能を持たせたNPOを作りたいと思ったんですね。ただし、クローバーリーフの中ではそれが出来なかった。実は、NPOは実施できる事業内容が厳しく限定されて各都道府県の認証を受けているのですが、クローバーリーフではセラピーとしての写真活動を主軸には持ってこれなかったんです。そこで新しいNPOをゼロから立ち上げざるを得ませんでした。

 

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今回はここまでです!

先生のお話を聞いていると、とても温かい気持ちになり、さらに、今日の一日を大事にしよう、という気持ちになりました。知らないうちに写真やスクラップブッキングに私も癒されていたんですね。

 

次回は

「怖そうなおじさんがパステルの...」

「写真で癒され、写真で新しい自分を発見する」

「癒しとしてのスクラップブッキング」

 

をお送りします! お楽しみに!!!

 

 


 

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